割算書

夫割算と云は壽天屋邊連と云
所に智恵万徳を備はれる名
本有此木に百味之含靈の菓
一生一切入間の初夫婦二人有
故是を其時二に割初より此方
割算と云事有八算は陰懸
算は陽争陰陽に洩事あらん
裁大唐にも増減二種算と云
事有況我朝にをひてをや懸
算引算馬と撰出正實法と
号儒道佛道醫道何れも
算勘之專也

割算目録之次第
ハ算同發 一  見一同發 一
歸一倍一同發 一  四十四割 一
四十三割  一  小一斤聲 一
糸割  三 掛て吉分 三
絹布割 三 升積算 十二
金割算 四 借銀借米 四
米売買 六  検地算 七
普請割  五    町見樣 ニ
已上拾六ケ條小數学五十五

八算之次第
二一天作五
逢二進一 十
三一   三十一
三二   六十ニ
逢三進一十
四一   二十二
四二   天作五
四三   七十二
逢四進一十
五一      加一
五二      加二
五三      加三
五回      加四
逢五進一十
六一      加下四
六二      三十二
六三      天作五
六四      六十四
六五      八十二
逢六進一十
七一      加下三
七二      加下六
七三      四十二
七四      五十五
七五      七十一
七六      八十四
逢七進一十
八一      加下二
八二      加下四
八三      加下六
八四      天作五
八五      六十二
八六      七十四
八七      八十六
逢ハ進一十
九一      加下一
九二      加下二
九三      加下三
九四      加下四
九五      加下五
九六      加下六
九七      加下七
九八      加下ハ
逢九進一十

右ハ算のこゑ かくのことく割
申候 若声をわすれたる時
二のたんに二一天作五と云ハ
十匁の物ニツに割候ヘハ五匁ニ
なる 又三のたんに三一十一
といふハ 十匁を三ツにわり
候へは三匁つゝにして 一刄ハ
あまり申候によりて 三十一と
云也 四のたん五のたん六の段
七のたん八のたんといふとも此
心也 但ハの段の時 七匁有
を八七八十六と云時に 八十
七か八かとわすれ申候時 八を
八々六十四といふ時に 七匁ニ
六分たり不申候 此六分を
下へさけて 又下算くわヘ
ハのこゑにて割申侯 いつれの
段もかくのごとく仕候也

見一之次第
置不置時者 見一無当
作九一と云 乱心ハ 百目を十
一人にわり候へといふとき 十人
には十匁つゝにて候へ共
十一人と云時 九一に作ハ
拾人に九拾目として 一人
分ハ残十匁の内にて引申候
時 一匁のこり申候 二十一も
二も 三十一も二も 四十一も
二も 五十六十八十七八と云
とも 右の心持同前也

帰一倍一之次第
引二不引時ハ帰一倍一と云
此心ハ 右作九一と仕時に
十二人にわる時 二人分下の
拾匁にて二人引申候時 たり不
申候時 上の九十目の内十匁
下へさけて 八十目と二十目に
なし 扨下の二十目の内にて 二人
分ハ匁つゝ十六匁引申候 是
も 二十の段も 三十のたんも 四
十のたんも 五十の段も 六十の
たん 七十八十九十の段と云共
右の心にて同前也
見一の段を引そろはんと云
又惣まくりとも云也

金子四十四割次第
一二     加下十ニ
二四     加下二十四
三六     加下三十六
四九     加下下四
逢四十四進一十
銀子四十三割次第
一二     加下十四
二四     加下二十八
三六     加下四十二
四九     加下十三
逢四十三進一十
小一斤之次第
一 退六二五  二 一二五
三 一八七五  四 二五
五 三一二五  六 三七五
七 四三七五  八 天作五
九 五六二五  是小一斤と云ハ
百六十目二斤の物を何程と
いふ時 代を如此割算也

唐目を日木目に直次第
一、唐日二斤八百六十目有 日本
日一斤ハ二百五十目有 唐目
何百斤成共有時 日木目に
なをす時 六四のこゑをかけ
申候時 日木目になり申候 斤より
下に二五をかけ申候時 何百何
十目としれ申候 又日木目か
何百斤なりとも有時 唐目ニ
仕度と云時ハ 右の六四にて
割申候時 唐目ニ成申候 斤より
下ハー六を懸申候時 何百何十
目としれ申候 是陰陽也

割算に懸てはやき分
一、十二半に割時八のこゑにて懸
申候 又十二半をかけ申候時ハにて
割申候 これはやき算にて
かくのことくよし
弐ツに割物ハ五のこゑを懸
申候 ニツをかけたいに五にて又
わるもよし
一、二十五に割物ハ 四のこゑを懸
てよし 二十五を懸申候物ハ 四
のこゑにてわりてもよき か
くのことくかけてもよし

絹布の次第
一、ぬのきぬもめんつむきはふ
たゑハーたんの代をきハめて
何尺成共かい申候 尺を中二置
きれ有ハ代を懸 一たんの長
さの尺にて割といふ也
一、又何匁成共 かね有時ハかね
の目を中ニをき かね有ハ惣の
尺をかけ惣の代にて割と云
此ニツの算陰陽也 是は
いつれのわりにもよき也
一、糸わたつなそ以下にいたる迄
代有ハ惣の目をかけて惣ノ代
にてわると云算よし たとヘハ
いとハ貫三百五十目有 此代銀
壱貫七百五十目といふ時 いと
五百三十五匁かい申候時 五百三
十五匁とをき 壱貫七百五十
目をかけ 九三六二五ニ成申候時
いとの目八貫三百五十目にて
割申候 百十二匁一分二厘六毛
に成申候 是五百三十五匁の代也

物に升かす入次第
一、京升ハ ロ五寸四方深二寸五分
有 さしわたし両ニをきかけ
ふかさかけ 六二五有 是一寸四方
の物 六十二半哲也
一、四角成物に升かす入申候ハ たつ
よこの寸両ニをき懸 高さ懸
さて十六を懸 升かす成也
一、丸き物ハ さしわたしの寸両に
置懸 高さかけ 十六を懸 さて
ハをかけ申候時 升かすに成也
一、おけハ ロのさしわたしとそこの
さしわたし一ツに置合 又ニツに
わり その算両ニ置かけ さて
たかさかけ 十六を懸 八をかけ
申候時 升かすに成申候也
一、三角ハ 一万の寸両に置懸 高
かけ 十六を懸 四十三を懸 升
かすニ成 うろこかた共云也
一、つほの分ハ かくのことく いく所
にても寸を取申候則つほのかたに
右つほを見て 寸を四ツ所にて
とり申候 扨 かたの寸一尺五寸を両ニ
懸二二五になる 二尺両ニをき懸
四に成 一尺八寸を両ニをきかけて
三二四になる 七寸を両二置かけ
四九になる 四口合九九八になる
これ四ツに割二四九五有 扨
たかさ二尺二寸を懸五四八九に
成 十六を懸 ハをかけ 升かす
七斗二合五勺九才ニ成申侯 ロー尺
と三寸のたかさに 十六と八を懸
三升ハ合四勺 右合七斗四升一合
一、右のことくつほのさし渡の寸
とられさる時 廻の寸を取て
その寸を三一六にわり さし渡ニ
成申候 かくのことく仕候也

一、右ロー尺五寸と両ニをき懸て ふか
さ一尺ハ寸を懸 十六をかけ さて
一ツとをき 二九六にてわる時に
三三七八三に成 是を右算に
懸時二斗一升ハ合九勺一才入
一、丸き物 右のことくしりとかり
たる 右の算と同前にして 右の
外ニ八を懸申候時 升かすニ成也
一、玉のことく丸き物を四方の物ニ
なをすハ 玉のまハり五尺有 四の
こゑにてわる時一二五に成 これ
一尺二寸五分四方 たかさも同寸
なり 一二五と両ニをき二度懸
さて十六をかけ 升かす三斗
一升二合五勺入申候也
一、玉のことく丸きさしわたし
一尺有物ハ ー寸四方物のかすニして
大かた百有時ハ五十に仕候なり
あらき算也 こまかにする時ハ
一寸四方の物百か四十九三分
三毛九糸有 かくのことく也
一、玉のさしわたしの寸一尺あれハ
まハり三尺一寸六分有 さし渡
ニツにわり五寸有 まハり三尺一寸
六分ニツニわり一尺五寸八分有
是に右の五寸をかけ七九ニ成
これによりて丸き物ニ七九を懸
八をかけてもよし

金かねかへの分
一、金子三百八十八匁有 此金の内
百三十二匁四十五匁の位なり
四十五ニ割二枚九両三三三ニ成
二百九匁七十三匁の位也
七十三ニ割二枚八両六三ニ成申候
四十七匁 五十七匁の位也
五十七ニ割八両二四五ニ成申候
三口合六枚六両二下八有 右の
金三百八十八匁を割申候時 大判
一枚ニ付五十八匁六分かヘニ 当也
一、金子銀かへ申候時 ハ両かへの九
両かへと云ハ 金二河ニ銀子八匁
又九匁の事也 金ををき ハ両
かへの時ハ 八をかけ 九両かへの
時は 九を懸申候時 銀目ニ成申候
一、銀子よきかねにあしきかねを
かへ申候時 内引といふハ 二わりと
云時あしきかねニ八を懸申候時に
よきかねニ成申候 一わりと云ハ九
をかけ 二わりと云ハ七を懸申候
一、同外引と云時 二わりと云時ハ
十二にわり 三わりと云ハ十三に
割也 是うちそとなり

借銀利足の次第
一、壱文子と云ハ 百目ニ一ケ月に
銀子一匁ツゝの利と可心得
二文子と云ハ百目ニ一ケ月に
銀百目ニ二匁つゝの利也 二匁
とをき 月のかすをかけ さて本
銀にその算をかけ申候也
一、田舎ハ月きりにかさす 一年
何わりとかし申候 是ハ三わりと
いふ時ハ 本を置 三を懸申候時に
利ふんしれ申候 本共にしる時
は 一三をかけ申候 何年成共
如此年のかすほとかけ申候也
一、たのもしと云ハ たとヘハ 十人有ハ
百目ツゝもちより 九百目有
そのとうにんハ出さす かくの
ことく 次の月より 百目ニ八匁
つゝの利をそへ 九月にてすミ申候
九月の利七十二匁の利足 此利
何わりニあたると云時 一より九迄
をき合四十五有 此四十五にて
七十二匁をわる時 一分六りんの
月子ニあたる也 世人かすおはき
ほと利そくやすくあたり申候
一、大工作れう高下の算と云
は 上の大工千人 中の大工千人
下の大工千人有 此銀三貫目
と云時 二わりさかりの次第也
一、壱貫目 一、八百卅三匁三分
一、六百九十四匁四分四厘 これを
三口合二貫五百廿七匁七分四厘
三貫目を右の合にて割申候時に
上の大工一貫百八十六匁八分一厘
中の大工ニ九百八十九匁四もう
下の大工八百廿四匁一分七厘六毛
右二わりにしてかくのことく 何
わりと云共かくのことく也

米の売買の次第
一、銀十匁ニ米三斗五升と云時ニ
米百五十三石五斗有 此かねと
いふハ三五ニわり申候時 銀四貫三
百八十五匁七分一厘ニ成申候
同銀十匁ニ三斗五升かへの時ハ
銀三貫五百七十五匁有 此米
何程といふハ 右のかねニ三五を
かけ申候 米百廿五石一斗二升
五合になる 何程有ても如此
ゐ中ハ米一石を銀何十目と
云 たとヘハ ー石ニ付て二十八匁と
いふ時 かね三貫五百七十五匁有
米何程といふハ 右廿八にてわる
時 米百廿七石六斗七升ハ合六
勺ニ成申候 かくのことくも有
一、同一石廿八匁の時 米三百五十
六石五斗有 此かね何程と云ハ
右廿ハを懸申候時 銀九貫九百
八十二匁ニ成申候 大小共に如此
一、江戸ハ小判にて何石かへといふ
たとヘハ ー両ニ二石八斗五升と云ハ
小判何両成共をき 二八五を
かけ申候 是江戸のさうは也
一、壱両より下ハ 分くたき米
くたきと云事有 かねの所ニ
あらハしをき申候也

検地の次第
一、たつよこのけん両ニをきかけ
扨三にて割申候時 何段いくせ
と成 せより下は三にてわらす
何十歩何歩と云也
一、丸き田中のさしわたし両に
をきかけ さて七九をかけ申候
時 歩に成 さて右のことくに三ニ
割申候時 何段いくせと成申候
一、同丸き田を何間ニ何間と
書付時 指渡の間を長さにして
又さし渡しの間ニ七九を懸て
そのさんをはゝに書付申候
一、此よこてニツ合廿一間五尺有
此廿一間ニ六のこゑを懸申候時 一三
一に成 ニツニわり
六五五ニ成 扨長さ
四十八間四尺有 同
四十八間ニ六のこゑ
を懸時二九二に
成時 右六五五を
懸申候時一九一二六ニ
成時 六にて二度わり申候時五百三
十一歩二八有 三にて割時一段七
畝二十一歩ニ成申候 これ也
一、是うろこかたと云 此中の十
八間二尺有  十八間ニ六をかけ
一一ニ成申候 是を二ニ
わり申候時五五ニ成
扨長さ三十一間を
かけ一七下五ニ成
六にてわり申候時ニ
二百八十四歩一六六ニ成也
一、うろこかた共見へす かくのことく
成有 五十三間  四尺二寸 此四尺二寸
六のこゑにて割時
五十三間七ニ成申候
三分一すて三分
二入申候 是十五に
割時三十五間八ニ
成申候 扨二十三間
をかけ申候時八百
二十三歩四に 成申候 三にて割時ニ
二段七畝十三歩四ニ成申候 如此なり
一、かくのことく成田有 いく所にて
もけんを打 一ツに
をき そのかす程ニ
又割 是をき合て
四十間有 又四ツニ
割十間に成 長さ
六十八間半をかけ
六百八十五歩有
三にて割 二段二
せ二十五歩有
いろいろのなりとも有 いつれも
四角成やうに見つもり いてたる
所ひき 入たる所へもひき なら
し申恨事 せんなり

普請割の次第
一、ほりロ十間そこ八間有 一ツに
をき十八間 二ツに割九間有
ふかさ六をかけ申候時五十四坪有
長さ六百七十三間有 右五十四坪
をかけ申候時三万六千三百四十二
坪有 米高二百五十七万二千
二百石有 右坪割付申候ハ 坪を置
米高にて割申候時 一万石ニ付て
百四十一坪二分八厘七毛六糸に
あたり申候 右米高一人つゝの分
一番 四十三万六千石
二番 六十八万石
三番 二十万三千石
四番 五十二万石
五番 三十二万五千石
六番 三十万七百石
七番 十万七千五百石
此衆へ右のめあすにて割かけ申候
一、間を打わたし申候ハ 右のことく
十間と八間を一ツして 又ニツに
割九間ニ成申候 ふかさ六間をかけ
四十八坪ニ成申候 一人にわり付申候
坪かす何ほとにても中ニをき
四十八にてわり申侯時 その人の間
かすしれ申候 かくのことく割也
一、土成共 くりいしなり共 坪ニ成ハ
たつよこの間を両ニをきかけ
高さ懸 坪ニ成申候 ふしん割ハ六尺
一間 検地ハ六尺五寸一間也
此とをり
十三間一尺八寸二分有
同廿三間五尺一分
同八間九寸七分有
同二十四間三尺六寸九分有
同廿間一尺九寸二分
同廿九間五寸五分
同三十間三尺九寸八分
のほりさか
の割 かくのことく也
右の割ハかんわりと云てさた
まりたる割ハなし たゝししき
ちやうのなをしと云割有 是
は口伝也
一、丸き山成共 川なりとも かく
のことく まハりの間を人
かすに割付
中のくいより
なわを引
わたし申候
これ御かふ
わりといふ割なり 普請
割いろいろあり

町の見やうの次第
一、むかひ目つけの所に一丈の
物有 それを目つけにして 又
手前をハ かいなをのへて わか
目と手さき一尺二寸有程
にのはし ゆひに尺のかねを
もち それにて さき一丈の
物の ねよりさきまて見つ
け申候時 手にもちたるかね
たとヘハ ー分半有時 一分半ニ
三のこゑをかけ申候時 四分五
厘ニ成申候 是にてさきの一
丈の物をわり申候時二二二と
成 これハ二百二十二間有と
しるへし さきに一丈とみる
物なき時ハ 人のせいに これも
何故共 尺にさたまりたる
ものをめつけにして 手前
のかねにて割申候時に 何間
に見申候也
一、高を見るハ 手前右のことく
にして ねもとよりうへまて
あてゝ その手前の尺に三の
こゑをかけ その寸を さきの物
よりわか見申候所まて何聞
有としり その間に手前の
三をかけたる寸をかけ申侯時
何十何丈何尺としれ申候
如此也

右はんきにおこし 世間ニ在之
と云共 割の次第廻遠に
してわけ難間ニ付 拙子知
音富小路通讃州寺町に
市兵衛尉と申候仁 所望被申候
割 間悉改作直 右はんきの
分大形書付畢 此陰陽ニツ
の所工夫を以 無不割云事
此外開平と云ハ平に四方
になす算也 開立法と云ハ
四方高さも同寸ニ塞のこ
とくになす算也 開円法と云
は玉のことく丸になす算
なり 何れもかやうの算共
数多有と云共 筆紙に尽し
かたし 口伝有 算用算勘
に泄事なし 士農工商琴
碁書画ふきはやししつ
のめの藤布はたにいたる
まて 算に洩事あらん哉
右作直悉改事ハ世攝津

国武庫郡瓦林之住人
今京都に住割算之
天下一と号者也
元和八年初春重能