「初等数学」創刊号 1984年9月秋季号


創刊のことば

「初等数学」という,ささやかな個人研究誌を発刊することにする.
俳句でも短歌でも,趣味,芸能の世界では地方誌,同人誌とまことに多彩である.
数学もある面では,芸であり,趣味である.独り酒盃を酌むような,天衣無縫な気持ちで取り組んでみたい と思っている.
初等数学の内容も,現行高校程度位までを標準として取り扱いたい.
人生を一つの山に例えるならば,すでに下り坂の終着点間近い私の年齢であるが,教育とか,受験とか, 一切の制約を超越脱皮して自由に,純粋に,もう一度初等数学の世界に回帰してみたいと思ったからである.
数学にとりつかれた少青年の日から,どんなに小さくとも,自分で考え,努力して,「数学する」こと を主体として,何か「独創的なもの」をと求め続けてきた.
あと余生少ない残された期間,今までいろいろと頂いた恩恵に対し,感謝の気持ちこめて,この仕事を 企画してみたのである.
大方の御教示をいただければ幸甚と思い創刊のことばにかえたいと思う.

昭和59年 初秋     74才老 早川学而